あなたは書きなさい。私も描くから。

あなたをこの世界に顕現しよう!

あなたは書きなさい。私も描くから。

絵:Naoto Kitamura

昨日、私はギャラリーの遅番のシフトだった。
朝からの雨で夕方からお客さんはほぼいない。
そろそろ閉める準備をしようかな、、
閉廊10分前頃だっただろうか、
1人の女性が入ってきてた。

女性:「まだ、いいかしら?」

私:「どうぞ。芳名帳にお名前をお願いします。」

女性:「書いたら、何か送ってくれるの?」

私:「DMをお送りします。」

女性「あ、そう。」

私の3つから4つ上ぐらいの女性だろうか。
そして、少し気が強そうにも見えた。

…………….

今、開催している展示は「北村直登」さん
の個展。
https://www.instagram.com/kitamura_naoto/
今ではすっかり有名になられて、
東京都内だけでなく近郊から
お客さんが来る。
私は7年前に北村さんの絵をたまたま観て
その時に
購入した。
昨日は天候もあり、夕方からは
お客さんがほぼいなかったけど、
初日から、北村さんの絵画がどんどん
売約済みになるし、グッズも売れる

………………..

その女性は、写真を撮っていいか?
と訊ねてきて、大丈夫ですよ。
と言うと、楽しそうに北村さんの絵を
1枚、1枚、撮り出した。

そして、

女性:
「私、最近、絵を描き出したの。
フェルメール展とかも観に行ったけど、
今はこう言う
アートの方が私は心が躍る。
すごく素敵ね!
これはアクリル?色使いが独特ね〜。
私も描けるんじゃないかと思っちゃうわ。」

私:「そうなんですね。^^」

女性:「この方は普段は何をされているの?」

 

あ、この女性は北村さんのことは
知らないんだ。

てっきり北村さんのファンの方だと思った。

 

私:「北村さんは、もうアーティストとして
確立されていて売れっ子なんですよ。
大分にアトリエがあって、
そちらに在住されているんです。」

 

女性:「そうなのね〜。
私、絵を描き出したって言ったじゃない。

基礎も大事だと思って、
デッサンも習いに行ってるんだけど

理論も大事なんだけど、なーんか
違うなと思うところもあってね。
でも、基礎は大事よね。」

 

私:「私も基礎は大事だと思います。
北村さんの絵って、一見、ラフに描かれて
いるように見えますけど
違いますよね。
あと、北村さんってストリートミュージシャン
みたいに
叩き上げでここまできたから
それも面白いですよ。
画家なのにバンドマンみたいで。」


女性:「そうなのね〜。
本当、惹きこまれるわ〜。」

 

私:「私は絵は描かないですけど、
お芝居やったり、最近、脚本に
挑戦してみたんです。
基礎は
習っていないので
そこは大事だなとも思います。
でも、関係ないやとも。」

 

ここぐらいまで話した時には
閉廊時間の19:00はとっくに
過ぎていた。


女性:「え、あなたお芝居やるの?
脚本も書いたの?

どこで、小劇場とか?
私、10年ぐらいお芝居やっていたのよ。」

 

そこから、女性と話が弾んだ。
その方の話を聞くと、元々は海外に
住んでいて、
日本に帰ってきて
息苦しかった。

雑誌の「ぴあ」でたまたまNYでお芝居を
教えている先生の
ワークショップの案内が
目に止まった。

外国人の先生だったら、その時感じていた
息苦しさも含め、開放できるかも、、
そんな発端でワークショップに通い
お芝居を始めたそうだ。
今はもうやっていないとのことだった。

 

私の経歴も話すと、更に興味を向けてくれて
私が、今、考えていること、やっていること

秋に企画しているあるアーティストの個展
(今、働いているギャラリーではなく、
別のギャラリーで、展示だけでなく
色々な企画を盛り込もうと思っている。)
について話すとすごく賛同してくれた。
そして、彼女なりのお芝居についても
色々語ってくれた。

その時に、私が

「これは友人に言われたことなのですが、
“お金にならないことばかり
やりたくなってしまう”

と言ったら
“もうそんなことはもう言うな!”
って言ってくれたんです。

私が今、やっていることが、
どの道につながっているかわからない。

通過点かもしれないし、そこから新たなものが
自然と見えてくると。」


と言うと、

 

女性は

「そうよ。その友人の言う通りだわ。
私だってそうじゃない!
この歳から絵を描き出したのよ。
そして、そのうち、あなたの名前を
見かけるようになるかもしれないじゃない。
この北村さんのような画家があなたの本の
挿絵を描いてくれる日が
来るかもしれない
じゃない。」


と言ってくれて、私は急に照れてたのと同時に


私:「そうですかね〜。
いやいや、私が書いてるものはまだまだです。
ボキャブラリーも足りないし、表現力も。」

 

女性:「いいのよ、それで!
でも言っとくわよ。
あなたは有名になる為に書くんじゃないのよ。
このギャラリー出会うアーティストやお客さん
それだけじゃなくて、日々、エモーショナルに
感じたもの、
あなたの心を動かされた人、
もの、言葉を書くのよ。」

 

私:「わかりました。」

 

女性:「さっき話してくれた
ここで出会った強面のおじさま先生(画家)の

あなたに掛けてくれた言葉もメモしとくの。
その方は画家だったかもしれないけど、
政治家と言う設定にもできるでしょ。
あなたが日々出会う出来事、人は全て全てが
あなたへのメッセージよ。
ネタ帳よ。w」

 

私:「ああ、そうですね!そうです!」

 

そして、女性は帰り際にこう言いました。

 

「あなたは書きなさい。
私も描くから。
また、来るわね。」

 

女性はギャラリーを出て
雨の中へ消えて行き

私はその姿を見送りました。


閉廊時間をとっくにすぎたギャラリーの
照明を夜間使用に落とし
北村さんの絵に囲まれながら
私はしばらく、ポツーンと佇みました。

 

一体、今の女性はなんだったんだろう。。。
宇宙からのお客さん?


不思議な雨の夜でした。

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「北村直登展 2022」

会期:2022/4/2(土)-13(水)
11:00-19:00
※木曜休廊
@しろがねGallery

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